原発の新設に国民の90%が反対。エネルギー問題に揺れるリトアニア

バルト三国の1つリトアニアでは、新しい原子力発電所設立を巡って議論が続いています。

リトアニアは、自国のエネルギー供給のほとんどをロシアからの輸入に頼っています。
依存状態から脱するため、日本の日立製作所に新しい原子力発電所を受注する予定でした。
しかし、日本の福島第一原発事故もあり、国内では反対運動が起きています。

バルト海に面するリトアニアは、2004年にNATOとEUに加盟しました。
当時リトアニアでは、ソビエト時代に作られたチェルノブイリ型の原子力発電所が稼働していました。
しかし、「安全性に疑問がある」とEUが指摘したことにより、2009年に停止しました。

原子力発電所を停止する直前の2009年のエネルギーシェアは、
再生可能エネルギー:19%
原子力:32%
ロシアからの輸入:51%
という構図でした。

それが、原子力発電所を封鎖したことによって、ロシアからの輸入が80%まで膨れ上がりました。
こうした状況に、リトアニア政府は強い警戒感を示しています。
ウクライナもまた、天然ガスをロシアから輸入することに頼っていました。
しかし、両国の関係悪化により、天然ガスの供給を一時的に停められてしまいました。
このように、エネルギーの供給を1カ国に頼るのは危ういことなのです。

リトアニアはエネルギー自給とロシア依存からの脱却のために、新しい原子力発電所を建設する予定でした。
3年まえに廃止した原発の横に作り、自国でエネルギーをまかなう計画です。
しかし、現在は原発推進を進める与党と反対する野党とでの対立が大きくなっています。
国民の間でも、意見が分かれています。

工場などの大規模施設では、電気料金は死活問題です。
ある繊維工場では、電気代は運営コストの半分近くを占めています。その電気代は、3年間で5割も増加しました。
原発をつくることで電気料金が安くなれば、多くの企業を助けることができます。

一方、不安も募っています。
福島原発事故を起因として原発への不信が高まり、人口が300万人のリトアニアで、なんと11万もの反対署名が集まりました。

国民投票でも、反対が64%を占めました。
年内に大きく動き出す予定だった新しい原発ですが、見直される可能性が大きくなりました。

とはいえ、こうした国民の声に即座に反応するのが正しいかというと、難しいところです。
リトアニアでは4年前、ソビエト時代に作られた原発を停止するかどうか、国民投票を行いました。
その時は、なんと90%以上の国民が原発の稼働継続に賛成したのです。

国民投票に法的な力はないため、新しい原発建設の案がなくなったわけではありません。
野党が原発反対を掲げるのも、議会選挙で与党に勝つためのパフォーマンスだと指摘する声もあります。事実、今の野党も与党時代は原発推進派でした。
また、新原発は他のバルト3国であるエストニア、ラトビアにも電力を供給するため、両国からの協力もすでに取り付けてあります。
この協力関係を反故にすれば、リトアニアの国際的な信用は落ちてしまいます。
また、そのままロシアにエネルギー依存を続けたままでいいのか、と指摘する声もあります。

原発か、ロシア依存か。
その2つの選択肢では、どちらにも不安が残ります。
再生可能エネルギーはまだまだ国の主力として活躍できるだけの能力はありません。
リトアニア政府は、難しい選択に迫られています。

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